novel-railwayのブログ

以前投稿した小説記事をこちらでアップしていきます。

餘部橋梁物語、その後 第4話

みなさまこんにちは、きづけば1週間以上開けてしまいました。
本日も久々に更新させていただきますので、よろしくお願いいたします。


> そうか、それじゃ今日は女将に直接聞いてみるか。
> そう言って、武井は笑うとタバコをふかすのでした。
>
> さて、さて猫尾としては昼からの仕事は、時間までに終える事が出来たのですが、女将の店に行くことを考えると少しだけ憂鬱な気分になるのでした。


昼からの仕事は、親方の一言ではかどり予定より少し早い時間でその日の予定は終わってしまいました。
生真面目な職人は、明日の段取りをする者もいる反面、人夫たちは三々五々仲間内で集まってタバコをくゆらせています。


周囲を山に囲まれた餘部では16:00を回ると薄暗くなってきます、16:53 浜坂行きの最終列車が餘部駅に停車する時刻が迫ってきます。


周りに何もないところだけに、鉄橋での音がやけに響いて聞こえてきます。


今までは、ただ通過するだけであった列車が駅に停車する。
ただ、これだけのことなのですが、親方にしても猫尾にしてもそして数多くの人夫達もその思いは一緒だったのです。


「あれが、最終列車らしいな。」


親方は誰かに聞いたのでしょう、自慢げに話しています。
列車が軽く警笛を鳴らして走り始めると、親方が声をあげます。


「おーい、今日の仕事はこれで終わりだ。飲みに行くぞー。」


それを聞いて一斉に歓声をあげる人夫たち。


武井が猫尾に声をかけます。


 「猫、行くぜ。」


「猫、お前も一緒に行くよな、今日は祝いだからなぁ。」
親方も声をかけてきます。


猫尾にしてみれば、朝のことがあるだけに・・・行ってみたいような、行くとさらに落ち込むような気がして仕方がないのですが。やはり親方の手前行かないとは言えません。


猫尾も正確には一応は親方なんですが、一人親方と呼ばれるものでした。
尋常小学校卒業してからずっと親方に面倒見てもらっていましたのです、
猫尾が尋常小学校を卒業したのが昭和16年で、当時は親方もまだ一人親方として仕事をしていたのですが、その頃からことさら可愛がってもらっていたうえ、父親を早くに亡くした猫尾にとっては親方は親代わりでもありました。


そんな猫尾ですから女将と一緒に居た男性も気になるし、そうかといって無下に親方の誘いを断るわけにもいきません。
さらに、武井が冗談とも本気ともつかない勢いで女将にプロポーズしようかなんて言い出しますから気が気ではありません。


少しだけ勇気を出して、こっそり聞いてみようと思う猫尾でしたが、こうした色恋には全く不得手な猫尾、さてそんなにうまくいくのでしょうか。


片づけはいつもの3倍の速さで・・・いえいえ、そんな赤い彗星ではないのですから。
でも、親方を含めて自転車で女将の店に向かうさまはまさに赤い彗星・・・というよりもチャリンコ軍団という雰囲気です。


やがて、親方率いる一団はそんなに広くない女将の店に入っていくのでした。
そして、猫尾はそこであるものを見てしまうのですが・・・。


その辺のお話はまた次回にいたしましょう。


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餘部橋梁物語、その後 第3話



皆さまこんばんは、本日も少しだけ更新させていただきます。
さて、前回はちらっと見かけた女将が親しげに話している男性といるのを見てしょ気てしまった猫尾ですが、どんな展開になるのでしょうか。
実は私も想像がつきませんというか、気の向くままに書いてみたいと思います。


> 気の毒な猫尾、仕事も手につかずで親方に怒られてばかり。
> さてさて、その後はどうなるのでしょうか?
>
猫尾にしてみれば、まさかの展開にちょっとパニックになっていました。
まさか、まさか・・・。


女将のことを思う気持ちが強かっただけに、その反動も大きなものだったのでしょう。
完全に手が止まっています、


おい、「猫」この仕事は急ぎなんだから・・・猫尾をせっつく親方の声が聞こえても生返事


「はい、・・・お、女将もう一杯」


これには親方も呆れて、


「猫尾、何が女将だ、今日中に目標に達成しなかったら残りの区画は猫一人でしてもらうぞ。」


親方の怒鳴り声が響いたものですから、他の職人も手を止めて猫尾の方を一斉に見ます。


 「す、すみません。親方」


「お前朝からちょっと変だぞ、・・・。」


現場は餘部鉄橋から少し離れたところでの荒れ地の整地作業でしたので汽車の通る音が聞こえます。
時刻はちょうど昼頃でしょうか、2本目の餘部駅に停車するディゼルカーが鎧の方から走ってきて今まさに駅に停車しようとしているところでした。


一緒に仕事していた猫尾の同僚が、「俺たちが作った駅だよなぁ」と呟きます。


親方も、「そうさな、俺たちが作った駅だ、途中からガキも手伝いに来たけどな。」
「あの時は、大変だったなぁ、猫に殆ど最後は任せたけどちゃんとやっていたじゃないか。」


「おっと、ちょうど昼だなぁ。残りの仕事は昼からするか。」
そう言って親方は周りを見渡すのでした。


誰にも異論はありません。


更に親方は、「おお、そうだ、今日は女将のところで一杯やるか。」


「今日は、俺のおごりだ」


そう言うと親方は猫尾にも声をかけるのでした。


「猫、お前も行くよな。」


有無を言わさない親方の迫力に、思わず「はい」と言ってしまう猫尾


「よし、そうと決まったら飯食って休憩したら、夕方までに個々の現場片付けるからみんな頑張ってくれよ。」


そういって、親方早速弁当を広げて食べ始めるのでした。


親方の手前、「はい」と言ったものの猫尾の気持ちは複雑でした。
女将の傍にいた男は誰なんだろう・・・。


聞いてみたい気もするし、そんな勇気もないし・・・。
しかし、夜は一緒に女将の店に行くと言う


聞いてみたい気持ちと、失恋した気持ちが猫尾の中で揺れ動いています。
そんなこと思っていると、猫尾の同僚の職人の、武井が声をかけたのでした。


「猫、お前女将にホの字だろう」


 「何言ってるんだ、お、お、俺は、お、お、女将のことなんかこれっぽちも思っちゃいねぇ。」


顔を真っ赤にして否定するものですからもうバレバレなんですけど、それでも必死に否定する姿に苦笑しながらも、


「そうか、それじゃ俺もちょんがーだから女将に言い寄ってみるかな。」


それを聞いて猫尾は、顔を真っ赤にしながら、


「お、お、女将には、だ、だ、旦那がいるんだ・・・。」


そう言ったきり黙ってしまいました。
それには、武井も驚いて、その話は本当か?
武井も聞き返すのでした。


猫尾は少し元気なく、「うん、そうみたいだ。」


そういったきり黙り込んでしまいました。


そうか、それじゃ今日は女将に直接聞いてみるか。
そう言って、武井は笑うとタバコをふかすのでした。


さて、さて猫尾としては昼からの仕事は、時間までに終える事が出来たのですが、女将の店に行くことを考えると少しだけ憂鬱な気分になるのでした。


続く


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餘部橋梁物語、その後 第2話

餘部橋梁物語、今回はどのような展開になるのでしょうか。
早速始めていきたいと思います、


> いつもはすれ違いばかりの二人ですが、今回は神様がちょっとした悪戯を仕掛けたようです。


香美町香住観光協会餘部橋梁の歴史から参照


一番列車はファーンというじゃ間間延びしたような汽笛を鳴らすとでエンジンの音を少しづつ大きくしながら走り去っていくのでした。
今まではただ走り去るのを橋の下から見るだけだった住民にしてみればそれは驚きでしかありませんでした。


猫尾は実は、この日は別の現場で作業だったのですが、少しだけ時間があったので駅に一番列車を見に来たのですが少し家を出るのが遅れたものですから、ホームには多くの人があふれ、仕方なく駅の上り口付近で様子を見ていたのでした。


列車は猫尾が見ている前を通り過ぎてやがてエンジン音が高くなり、やがて小さな音になったので走り去ったことは何となくわかりました。
そして、地元の人も三々五々と小さな猫の額のようなホームから階段を通じて降りてくるのが見えます。
足腰が弱いのか、先ほど旦那さんの写真を抱えていたお婆さん、恐る恐る階段を下りてきます。
そのためという訳ではないでしょうけど、狭いホームはまだまだ混雑したままです、でも誰も文句を言う人はいません。
だって、今までの苦労から比べたらどれほど楽で、どれほど安全になったかをみんな知っているのですから。
多分、このお婆ちゃんが一番それを感じているのではないでしょうか。


実際、駅のホームに列車が滑り込んだ時お婆ちゃんは目頭を押さえながら。「あんた、汽車がやって来たよ。あんたと一緒に、温泉でも行きたかったね。・・・。」


それを聞いていた周りの人もついぞ貰い涙で・・・。


だから、帰りがけお婆ちゃんがゆっくりゆっくり歩いているのを見ても誰も文句は言わないのでした。


そんな住民が少しづつ降りて来る中に猫尾は女将の姿を見つけたのでした、


「おーい、女将・・・」と言いかけて猫尾は隣に親しく話している男性がいることに気付きました。
あの男は?
見かけない顔だが、・・・それにしてもやけに親しくしているなぁ。


猫尾にしてみれば気が気ではないのですが・・・こうしたことには奥手な猫尾。


気になりながらも、声をかけることも出来ず…ちょうどその同じころ女将も猫尾に気付いて、
「猫尾さん」と声をかけたのですが、


猫尾は気付かないままスタスタと歩いて近くに止めてあった自転車に飛び乗ると現場に向かって走っていったのでした。


猫尾はペダルを漕ぎながら、誰なんだろうか・・・あの横で親しげに話していた男は・・。
女将の旦那がシベリアの抑留から帰って来たのだろうか・・それとも・・・猫尾の妄想は広がるばかりです。


気の毒な猫尾、仕事も手につかずで親方に怒られてばかり。
さてさて、その後はどうなるのでしょうか?


気になりますか?
でも、その続きは次回までのお楽しみといたしましょう。


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