鉄道公安官物語 第16話
さて、前回のお話ではデッキに佇む女性のところで終わっていたと思うのですが、先輩公安官はどうして彼女に注目したのでしょうか。
夜間の警備を続ける、猫尾たちですが薄暗い車内で先輩公安官が見かけた事実とは・・・。
> 薄暗い車内をとおり、デッキに出てみると一人の女性が佇んでいます。
> そして、その女性の異常に気づいたのでしょうか。先輩公安官が近づいていきます。
それは、先輩公安官の長年の経験と言うか勘でした。
この女は事件を起こす・・・、そんな風に感じたとあとで先輩公安官は言っていました。
そのときの会話はこんな感じだったのです。
「お客さん、デッキ付近に立つと危険ですよ。車内も空いていますからどうぞ。」
「・・・・」
「お客さん、聞こえていますか。」
「・・・・」
無言のまま、目をそむけるように彼の前をとおり、隣の車内に消えていったのでした。
先輩公安官は、白根に向かって話しかけるのでした。
「あのお客さんは、飛び降り自殺を考えていたのさ。」
白根はとっさにいわれても理解できませんでした。デッキに立っているだけでそんなことわかるのでしょうか。
「へぇー、そうですか。はい、はい・・・。」
先輩が白根をからかっていると思い適当に答えていました。
先輩はむっとしたのか、少しきつい声で
「まじめに聞け、あの女はデッキから足を伸ばすようにしていたんだ。」
「ふざけているとしたら、デッキから出すのは顔だ、足を出しているのはそのまま足を踏み外して・・・ということを考えているんだ。」
ふっと、白根の頭には、10年以上前にラジオで聞いた、「春の海」で有名な、作曲家・箏曲家、宮城道雄がなくなったニュースのことが思い浮かんでいました。
画像 wikipediaから引用
事件の概要を簡単に記すと、お正月によく聞く曲「春の海」で有名な、作曲家・箏曲家、宮城道雄が、急行銀河に乗車中、昭和31年6月25日午前3時頃に愛知県刈谷市の刈谷駅付近で転落、手術の甲斐なく4時間後に死亡したという事故です。
「すみません、ふざけて」
白根が素直に謝ったものですから、涌井もそれ以上は何も言わず。
その理由を白根に話し始めるのですが、その辺の話はまた後ほどさせていただきます。
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